なぜ椎骨動脈解離は見逃されるのか?実例を交えて説明します

椎骨動脈解離は見逃しが多い病気です。

発症率は10万人に1~3人とされており、稀な病気と認識されています。しかし、当院が注意深く診たところ、有病率20%という高確率な結果が出ました。詳細

一般的な脳神経クリニックで年間に1~3人、多くても5人程度しか見つからない病気ですが、当院では20人以上見つかっています

実際に椎骨動脈解離は「見逃しが多い」のです。当院で見つかる解離のうち、5~6人に1人は他院で先に検査をしていた方です。

なぜ、見逃し・見落としが起こるのか?

  1. 首の痛みだけで整形外科へ行く場合
     →骨や筋の異常、あるいは血行不良を疑う事が多いから

  2. 頭の痛みで脳神経外科へ行く場合
     →脳疾患や後頭神経痛、血行不良を疑う事が多いから

つまり、解離を疑わないケースが多いのです。


解離は解離疑いの検査をしないと見つかりません。そのため、下記の工程が必須です。

  1. 医師が椎骨動脈解離の疑いがあると判断する

  2. MRA撮影と呼ばれる血管撮影を実施する

  3. MRAは脳だけでなく首も撮る必要がある


尚、この条件をクリアしても、見逃しが発生するケースもあります。実例を用いて、その内容を解説します。

見逃しが起こった実例

患者様の経緯

40代男性の方。右後頭部に頭痛が発生。
 ↓
他の脳神経外科を受診しMRIを受けるも、解離の診断はなし
 ↓
しかし、右後頭部痛が治まらないため、当院へ受診。
 ↓
当院でMRI検査を実施し、解離が見つかる

患者様が最初に受診したクリニックへ

最初に受診した脳神経外科へ画像データの提供をお願いし、連絡を取りました。その結果、そちらの画像にも解離の所見はありました。お返事にはこのような記載がありました。

「該当箇所はPICAendに見えたので、解離の可能性は否定していました。後から思えば解離を疑う所見でした。」

PICAendとは?
PICA=後下小脳動脈です。椎骨動脈から分岐している血管です。多くの血がPICAに流れており、画像では椎骨動脈が途切れているように見える。これがPICAendです。

Q.では、その先生の医学的知識に問題があったのか?
そうではありません。むしろ、しっかりと患者を診ますし、評判の良い先生です。


Q.なぜ、そんな先生でも見落とすのか?
答えはこの2つです。

  • 解離を稀な病気と認識しているから(=病気の第一候補には入れない)
  • 診療で解離を見るケースが少ないから(解離診断の経験不足)

今回の場合MRA撮影を行い、首の血管をしっかり撮影しています。ですが、ここまでやっても「解離を疑う」という意識がなかったため、発見に至らなかったのです。しかし、今回の経験を活かして、今後は解離の発見が増えていくと思います。

最初の受診先での画像
確かに画像上では、赤丸部分の椎骨動脈が消失状況に見える


当院で撮影した画像
同一箇所に所見あり
※最初の脳神経外科とは撮影時期が1カ月程違うので、経過と共に画像も変わってくる


明確な出血状態も確認できる
※もし最初の脳神経外科でこの確認を行っていれば見つかった可能性が高い。しかし、解離疑いではない前提で撮影しているため、この画像を撮らなかったのは致し方ない。

解離の見逃しの実態

当院は解離を見つける側の立場なので、当院の前に患者様が行かれた病院やクリニックへ画像提供をお願いするケースがあります。しかし、これまでの経験上、素直に誤診であった事を認めずに意地の悪い対応をしてくる病院が多々ありました。

例えば、肝心の首の部分を抜いたデータを渡してくる、頑なに自分の落ち度を認めない返事をしてくるなど。酷い場合は、理由を付けて画像データを渡さない場合もあります。

これらには全てに共通事項があります。それは、当院から連絡が行く事で、「自分達が解離を見逃していた事実に気付く」という事です。どんな医師も診断を間違えることはあります。

問題はそれを知った時に、素直に受け止めるか、開き直るかの違いです。

残念ながら、医療業界の現状はこの通りです。当院としては、この病気の認識を変えたい思いですが、そう簡単には変わらない未来が想像できます。

ですので、患者様側へメッセージを投げ掛けて締めとさせていただきます。


後頭部痛で解離が疑われる場合、解離の確認を行うMRI検査が必要です。解離はただの頭痛と違い、脳神経外科で行けば確実に見つかるものではありません

解離の症状が複数合致する場合は、患者様から「解離ではないか調べて欲しい」と伝えても良いと思います。


椎骨動脈解離のよくある症状

  1. 後頭部の頭痛
  2. 首の痛み
  3. 左右どちらかの痛み
  4. 痛みが強い

下記にも合致する場合は、さらに疑いが強まります。

  • 痛みで目が覚める
  • 何日も症状が続く
  • 痛み止めが効かない


どこへ行けば良いかわからない場合は、当院へお越しください。当院は横浜市青葉区の脳神経外科・脳神経内科クリニックです。

当院へ新幹線や飛行機で来られる方もおります。それは信頼の証ですから嬉しい気持ちはあります。ですが、同時に申し訳ない気持ちにもなります。あまりにも遠距離の場合は、まずはお近くで探してみるのも良いでしょう。都道府県単位で探せば、解離を見れるクリニックはあるはずです。

記事監修

院長 泉山 仁

・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医

平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業

 
 
横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科

田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分
診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日

初診でMRI希望の方は事前にお電話にてご予約ください。
当日のご予約も可能です。
 
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電話番号:045-482-3800

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