「最近、後頭部の痛みが気になるけど、大丈夫かな?」と、症状が気になり始めていませんか。後頭部の頭痛は、放置しておけばくも膜下出血や椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)など、大きな疾患につながる可能性があります。
では、後頭部の頭痛が気になる場合、病院に行くべき判断基準や対処法などはあるのでしょうか。後頭部の頭痛には、病院に行くべきかどうかの判断に役立つヒントがあります。
本記事では、後頭部の頭痛への対処法を受診前の判断に役立つ7つのヒントとして解説します。
後頭部が痛いときの病院に受診すべき4つの症状
後頭部の痛みを感じた場合は、現在の頭痛の症状から病院(脳神経内科・脳神経外科)に受診すべきかどうかの判断をおすすめします。症状によっては、脳梗塞やくも膜下出血などの重大な脳疾患の発見に繋がるでしょう。
後頭部が痛いとき、まずは次の症状に該当するかどうか確認してください。
- 後頭部頭痛の症状1:今まで感じたことのない頭痛
- 後頭部頭痛の症状2:昨日より今日とだんだん悪化する頭痛
- 後頭部頭痛の症状3:吐き気や手足の動きにくさをともなう頭痛
- 後頭部頭痛の症状4:発熱をともなう頭痛
症状1:いままで感じたことのない激しい頭痛
後頭部が痛いときは、その痛みが「いままで感じたことのない激しい頭痛かどうか」という判断が必要です。いままで感じたことのない痛みとは、経験したことのない激しい頭痛が該当します。
激しい頭痛の場合は、脳の病気が考えられます。例えば、脳出血やくも膜下出血、髄膜脳炎などの重大疾患の症状です。状況によっては、意識を失うケースもあります。
何らかの疾患に繋がる前兆となる頭痛は、二次性頭痛と診断する場合があります。二次性頭痛は、脳神経外科による見解では頭痛を訴える患者18%が該当している状況です。
出典 :頭痛の診療ガイドライン2021
要するに、受診した2割弱の患者さんは、脳疾患の前兆となる二次性頭痛だと考えられます。急に起こる頭痛の場合は、脳出血の可能性も考えられます。当院の「脳出血」について解説しているページを参考にしてください。
脳出血の原因・症状
症状2:昨日より今日とだんだん悪化する頭痛
後頭部の頭痛では、いきなり激しい痛みを感じるものではなく、昨日より今日とだんだん悪化する症状も当てはまります。昨日より今日の頭痛のほうが痛い場合は、徐々に痛くなり悪化していくケースです。
後頭部の頭痛が徐々に悪化していく場合は、前述した二次性頭痛の可能性があります。二次性頭痛では、脳出血やくも膜下出血などの命にかかわる疾患かもしれません。早めの受診が必要です。
※下記のページで、くも膜下出血の症状について詳しく解説しています。
くも膜下出血の前兆・原因
症状3:吐き気や手足の動きにくさをともなう頭痛
後頭部の頭痛だけではなく、同時に吐き気や手足の動きにくさを伴っている場合は、病院の受診が必要な症状だと考えられます。吐き気や手足の動きにくさは、やがて嘔吐や手足のしびれにまで悪化するかもしれません。
頭痛に対して吐き気や手足の動きまで症状が現れる場合は、二次性頭痛の可能性があります。二次性頭痛では、前述した症状と同じく、くも膜下出血や脳出血などの脳卒中の前兆とも考えられます。この症状の場合も早めの受診が必要です。
※危ない頭痛のサインとしてよくある症状
頭痛のよくある症状
※しびれの症状によ次第ではしびれ外来の受診が必要
しびれについて
運動麻痺(まひ)や感覚障害などは、脳梗塞の症状も考えられます。脳梗塞については下記のページで詳しく説明しています。
脳梗塞について
症状4:発熱をともなう頭痛
後頭部の痛みに発熱を伴った場合は、風邪と判断することも少なくありません。発熱と頭痛は、よくある症状でもあるので医療機関にも行かずに済ませてしまう人もいるでしょう。
ただし、発熱をともなう頭痛の場合は注意が必要です。日本医師会では、頭痛にともなう発熱の症状について次のように言及しています。
”頭の感染症の初期症状は、風邪と同じ熱から始まることが多いので注意しなければいけません ”
※引用元:日本医師会「頭部を痛がっている場合」
ただの風邪からきている頭痛の場合もありますが、受診が必要な場合もあります。脳神経外科・脳神経内科では、次の症状がある患者さんを診察します。頭痛のよくある症状
後頭部の頭痛で確認すべき3つのポイント
後頭部の頭痛を抱えている方、または後頭部痛を発症した方は次の症状も確認してください。
- 頭痛以外の吐き気
- 首の痛みや目のまぶたが下がり気味
- 首の後ろ左右が突然痛み出す(数日間続く)
頭痛だけではなく吐き気をともなう
前項で受診すべき症状として解説しましたが、「吐き気をともなう頭痛かどうか」は、確認事項として重要なポイントです。他に吐き気の要因が見当たらなければ、二次性頭痛の可能性が考えられます。
頭痛だけではなく吐き気をともなう場合は、二次性頭痛(くも膜下出血や脳出血、脳腫瘍、髄膜炎など)の疑いがあります。二次性頭痛に該当する頭痛以外の危険なポイントは、次の通りです。
- 発熱や嘔吐、めまいをともなう頭痛
- しびれや麻痺をともなう頭痛
これらの頭痛以外で確認すべきポイントなど、具体的な危ない頭痛のサインについてはこちらのページで解説しています。
頭痛は軽いが首が痛み目のまぶたが下がる
頭痛の症状は軽度の場合でも、注意が必要な症状があります。
- 首の痛み
- 目のまぶたが下がる(まぶたのけいれん)
くも膜下出血では、突然起きる経験したことのない頭痛により発症したと判断されがちです。ところが、激しい頭痛が発症する前に頭痛以外の症状があらわれているケースも少なくありません。
当院と連携している大病院の横浜新都市脳神経外科病院では、くも膜下出血の症状について、「突然バットやハンマーで殴られたような頭痛」や「これまでに経験したことのない激しい頭痛」と表現しています。また、頭痛以外の症状についても言及していました。
- 悪心(吐き気)
- 嘔吐
- 意識障害(意識がもうろうとしている)
- けいれん(顔の一部など)
- 頚部痛(首の痛み)
くも膜下出血の前兆として、頭痛以外の症状では首の痛みやけいれんも確認すべきポイントになるでしょう。
※参考:横浜新都市脳神経外科病院「くも膜下出血について」
首の後ろ左右に突然の痛みが数日間続く
前述した首の痛みは、くも膜下出血以外の病気の前兆とも考えられます。首の後ろ左右に突然の痛みが発症し、数日間続く場合は椎骨動脈解離が疑われます。
椎骨動脈解離は、後頭部から首の左右後ろにかけた頭痛であれば初期症状の可能性があるでしょう。「最近肩こりがひどい」や「首の後ろや後頭部の痛みが気になる」という症状の場合は、椎骨動脈解離の前兆かもしれません。早めの受診をおすすめします。
椎骨動脈解離について、詳しくは下記のページで解説しています。
椎骨動脈解離とは?
後頭部の痛みから考えられる病気
後頭部の痛みから考えられる病気は、さまざまなものが考えられます。中でも次の病気が後頭部の痛みの原因となるケースが多いです。
偏頭痛
偏頭痛は、こめかみの辺りに痛みの症状が多くみられる頭痛です。よくある慢性的な頭痛は、一次性頭痛として診断されます。偏頭痛は、一性頭痛に該当します。「危険度は低いが生活に支障をもたらす頭痛」として、適切な治療を受けることが必要です。
偏頭痛は、後頭部の痛みなど、「ズキズキ」や「ズキンズキン」という痛みの特徴があります。痛みがあるうちは、他のことができなくなる点が厄介な部分です。
偏頭痛については、こちらのページで詳しく解説しています。
くも膜下出血
くも膜下出血は、「突然起こる激烈な痛み」や「吐き気や嘔吐」などをともなう後頭部の痛みからも起きる病気です。コブ状の血管である脳動脈瘤の破裂による激しい痛みが特徴となります。くも膜下出血の全国平均の発症年齢は、次の通りです。
男性:56.1歳
女性:64.5歳
※出典:J-Stage「脳卒中データバンクを利用したくも膜下出血の解析」
くも膜下出血は、初期出血ではなく再出血時に重症となる危険性があります。命にかかわるため、緊急入院や緊急治療の場合も考えられます。症状が軽ければ、CT検査で見つからない点が厄介な部分です。
軽度のくも膜下出血は、風邪による頭痛と判断し放置するケースも少なくありません。事前に見つけにくい点が特徴の病気です。
当院では、初診の患者さんに対してMRI検査で判断する体制を整えています。もし、患者さんの後頭部痛の症状が現在進行している急性期の症状であれば、大病院との連携で緊急処置への手配も万全です。
くも膜下出血について、こちらのページでは漫画や動画で分かりやすく解説しています。
椎骨動脈解離
後頭部や首の付近に次の症状がある場合は、椎骨動脈解離の可能性があります。
- 強めの頭痛
- 首の痛み
- 首を通る血管の膜が裂ける
- 首を通る血管の膜が剥がれる
- 首の付け根が痛くなる
椎骨動脈解離は、首の血管が裂けたり剥がれたりすることで首や後頭部に痛みを生じます。血管の膜が裂けることにより、血管とは別の箇所に血の通り道ができる症状の病気です。
椎骨動脈解離は、悪化するとくも膜下出血や脳梗塞になるリスクがあります。そのため、後頭部や首の後ろに痛みを感じた場合は、受診を考えることをおすすめします。
椎骨動脈解離については、こちらのページを参考にしてください。
まとめ:受診は早ければ早いほうが対処もある
後頭部の頭痛は、本記事で解説した症状に当てはまるでしょうか。もし、当てはまる点があれば早めの受診が必要です。当院は椎骨動脈解離の治療に関して、豊富な症例や事例、経験などを生かした判断ができます。
本記事は、後頭部の頭痛から考えられる病気を知る機会に活用してください。「後頭部が痛い」という場合は、いきなり紹介制の大病院に受診することは難しいのが現状です。
当院は、大病院との連携を強化しています。緊急性の高い急性期の症状にも迅速な判断や対応が可能です。当日予約や当日来院も可能なため、まずは脳神経外科・脳神経内科の受診を考えている場合は、早めの受診をおすすめします。
記事監修

院長 泉山 仁
・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医
平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業
田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分
診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日