椎骨動脈解離(解離性脳動脈瘤)

椎骨動脈解離とは

椎骨動脈解離とは

椎骨動脈解離とは、首を通る血管の膜が裂けたり、剥がれてしまう病気です。動脈瘤(血管のこぶ)を形成したり、脳梗塞(血管の詰まり)、くも膜下出血(血管の破裂)を引き起こす原因となります。椎骨動脈は首の左右に一本ずつあり、解離を起こした側だけが痛むケースが多いです。動脈解離で一番多いのは心臓の近くにある大動脈が解離することです。次に多いのが脳の血管におこる椎骨動脈解離(脳動脈解離)です。よく見られる初期症状はうなじや後頭部の強い痛みです。ほんの軽いケース以外は2~3日では良くならず、一週間、あるいはそれ以上の期間強い頭痛が続きます。

画像はBB法と呼ばれる手法で撮影した椎骨動脈です。赤丸側の椎骨動脈に白くなっている部分があり、これが解離と判断されます。反対側は正常な椎骨動脈のため白い所見は見られません。

症状

  • 後頭部の頭痛
  • 強い頭痛
  • 首(うなじ)の痛み
  • 左右どちらかの痛み

椎骨動脈解離は40代から50代が好発年齢ですが、若い方にも起こります。左右片側だけの痛みである事が特徴です。痛みは通常の頭痛よりも強い傾向にあり、解離が続いている間はその痛みが続きます。わかやすくハッキリとした症状が特徴ですが、実は誤診や見逃しが非常に多いです。偏頭痛や寝違えと誤診される事がよくあります。理由は後述します。

原因

椎骨動脈解離は首に過度な負担が掛かった時に起こりやすい病気です。整体やカイロ、美容院でのシャンプーなども引き金になります。また首を激しく動かすスポーツや首に衝撃がくるスポーツ、交通事故によるもの、首をぶつける等でも起こりますいわゆる捻った、捻挫を起こしたという事象と同じく、無理な負荷は解離を引き起こします。意外なスポーツではゴルフでなる方がいらっしゃいます。また本人に自覚がなくても起こるものなので、必ずしも思い当たる節があるとは限りません。

検査

検査方法は造影剤使用によるCT撮影か、MRI撮影となります。通常撮影で血管を映し出せるMRI撮影が推奨されます。レントゲンでは椎骨動脈解離の鑑別はできません。レントゲンでは血管の状態が確認できないからです。尚、ただMRI検査を受けるだけでは見つかりません。MRIにて首のMRA検査を行う必要があります。

誤診、見逃しが多い理由

椎骨動脈解離は誤診や見逃しが非常に多い病気です。その理由は二つあります。

一つはレントゲンでは鑑別ができないからです。首の痛みがある場合は整形外科さんに行かれる方が多いと思います。そうなると、通常は骨の異常がないかをレントゲンで確認します。そこで異常がなければ、寝違えで筋を痛めたとか、姿勢の悪さからくるコリや血行不良といった診断が下されます。しかし、これは重要な事を確認しそびれています。それは椎骨動脈解離の疑いです。この病気を見つけるためには血管の撮影ができる検査が必要です。その為、MRIでの検査が必要なのです。

ここで二つ目の理由が出てきます。椎骨動脈解離はただMRI受けるだけでは見つかりません。つまり、後頭部の頭痛で脳神経外科を受診した場合でも見逃しは起こるのです。その理由は頭痛でのMRI撮影の通常工程に椎骨血管の撮影が含まれないクリニックが多数あるからです。鑑別する為には医師が椎骨動脈解離の疑いがあると判断し、MRA撮影と呼ばれる血管の撮影を行い、かつ脳だけでなく首も撮る必要があるのです。

当院では後頭部の痛みを訴える患者様には、慎重に確認するようにしています。BB法と呼ばれる撮影技法も併用して撮るケースもあります。血管MRAでハッキリとわかる症例なら良いのですが、実際には血管MRAでは判断が難しい症例があり、その場合、発見に至らない事になります。これをBB法を用いて、更に入念に確認することで椎骨動脈解離の発見率を上げています。

BB法は本来血管のプラークなどを調べる為に使う撮影方法ですが、実際に発見に繋がり非常に有効な検査方法であると実感しています。

誤診・見逃しで生まれるリスク

椎骨動脈解離は注意しながら経過を観察することが望ましく、誤診や見逃しが起こる事は非常に良くありません。それは椎骨動脈解離が重大脳疾患に繋がるリスクを抱えているからです。椎骨動脈解離のみで済めば頭痛が徐々に治まっていき、解離した部分も自然治癒していきます。しかし、その一方で脳梗塞やくも膜下出血に繋がる事があります。


整理するとこのようになります。

椎骨動脈解離のその後 下記のいずれかとなります。

  • 1.自然治癒により回復する
  • 2.血管が詰まり脳梗塞を発症する
  • 3.血管が破れくも膜下出血を発症する


脳梗塞やくも膜下出血は命の危険を伴う病気なので、可能な限りそのリスクは低減するべきです。例えば血管詰まりのリスクが高ければ抗血小板薬を処方することで、脳梗塞のリスクを飛躍的に下げる事ができます。しかし、このような取り組みは椎骨動脈解離である事を発見する事が前提です。ですから、どの程度、どのように解離しているかを診てもらう事が大切なのです。椎骨動脈解離は現代の医療では軽視されがちな病気ですが、もっとしっかりと精査し発見していくべきです。

2022年に吉本興業の千鳥ノブさんが、右椎骨動脈解離で入院した事で話題となりました。首の痛みが取れないとの事から発見に至ったそうです。幸いにも数日の入院と一か月程度の安静で済み大事には至りませんでした。椎骨動脈解離自体はそこまで稀な病気ではありません。ただ誤診や見逃しによる潜在的な患者様が相当数いると思われます。現に当院のような普通のクリニックでも椎骨動脈解離の患者様が見つかります。

どこで診てもらえば良いのか

「MRIがあり、椎骨動脈解離の精査をしてくれるクリニックへ行く」が答えです。ですが、この基準で探すことは難しいと思います。どの程度椎骨動脈解離に理解のある医師で、どのようにMRI撮影を行うかは公開情報ではないからです。MRI撮影には通常この工程で撮るというルーティーンがあるのですが、患者様が訴える症状によって撮影方法を追加したり変更する必要があります。例えば、椎骨動脈解離疑いなら血管MRA、聴神経腫瘍疑いならCISS法というようにです。

しかし、現実問題そのような柔軟な対応が出来るクリニックばかりではありません。何故なら、他の病院でMRIを受けた方が当院へ来て見逃しが見つかる事はよくあるからです。

実はここ二年程は帯状疱疹の患者様が増えています。局所的な強い痛みが椎骨動脈解離の症状と一致しますが、こちらは実際に患部を見ることで発見できます。帯状疱疹が増えた背景は下記の記事をお読みください。

コロナワクチンと帯状疱疹の関係について
https://www.ymc3838.com/column/4250/

帯状疱疹が増えてからは他のクリニックでは見逃しが頻発していたと思います。他の病院でMRI上異常なし、原因不明と言われて当院へ来て、触診で発覚という事案が多発したのです。これはコロナ禍で患者と触れることを控えた事もあるでしょうが、最大の理由は医師が疑う疾患の選択肢に帯状疱疹がなかったことです。椎骨動脈解離も同じ状況に置かれています。はなから医師の選択肢にないせいで、血管MRA撮影を実施しないというケースがままあるのです。それでは見つかるものも見つかりません。



話を纏めます。

椎骨動脈解離は症状がハッキリしています。

  1. 後頭部の頭痛
  2. 強い頭痛
  3. 首の痛み
  4. 左右どちらかの痛み

このような症状がある場合は、椎骨動脈解離の疑いを持ってください。

どこで診てもらえば良いかわからない場合は、当院で検査を承ります。
問診票に椎骨動脈解離疑いと書いてくだされば、しっかり精査させていただきます。

当院がこのような形で調べるようになりまだ数か月ですが、既に4人見つかっています。
繰り返しますが、潜在的にはかなりの数がおられると思います。

自覚症状のある方は速やかに検査を受けて、診てもらってください。

即日MRI検査、結果説明が可能です

「思い立ったらすぐ検査」が可能です

当院ではMRI希望の方は、初診でもご予約を承っております。
そのため、当日のご予約、当日のご来院が可能です。
もし当日枠が埋まっていても、殆どの場合翌日には検査が可能です。
ご来院の際は、事前にお電話にてお問い合わせください。
電話番号:045-482-3800

1回のご来院で全てが終わります

1回のご来院で診察、MRI撮影、結果説明の全てを行います。
大病院でのMRI検査は診察、検査、結果説明と3回通う事も少なくありませんが、当院では何度も通う必要はありません。
※より詳しい所見を必要とする場合、MRI以外の検査を行う場合は例外があります。
※椎骨動脈解離の場合は続けての来院が必要なケースが多いです。理由は経過観察に気を付けるべき状況にあるためです。

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