先日、怖い事例があったのでご紹介します。
患者様の経緯
- 意識障害が出た。
- 救急搬送で大きな病院へ行きMRI検査を受けた。
- 「異常なし」と告げられた。
- 後日片側の脱力感、しびれが出始め「本当に問題がないのか?」と問い合わせるも「異常なし」との回答。
- その後、当院へご来院。
電話で成り行きを伺った時点で嫌な予感はしました。「これは見逃しがあるかもしれない」と。患者様は撮影したMRIのデータをお持ちでした。その画像データを注意深く見ていくと「ん?」と思う箇所がありました。ですが、画像データが汚く鮮明度に問題がありました。中途半端な状態で伝えるのは良くないと思い、まずは検査に回っていただきました。
お持ちになられた画像です。正面からは問題ないように見えますが、、
角度を変えたら怪しい所見が出てきました。
当院で撮り直したところ、はっきりと血の巡りが悪くなっている事が確認できました。
意識障害、脱力感、しびれの原因は一過性脳虚血発作(TIA)でした。
一過性脳虚血発作(TIA)とは?
一時的に血液の流れが止まり異常な症状が現れる病気です。脳梗塞と同じ症状が生じ24時間以内に自然に消失します。殆どは1時間程度で症状が消えますが放置は厳禁です。理由はその後に脳梗塞を起こす可能性が高いからです。一過性脳虚血発作を起こした方のうち15~20%は三ヶ月以内に脳梗塞を起こし、その半数以上が48時間に発症します。
一見して気付きにくい箇所にあります。しかし、百歩譲って見逃してたとしても、患者様が「本当に何もないのか?」と申し出た時点で、もう一度入念に確認する必要があったと感じます。この患者様はご自身で危機感を持って当院へ来たことで発見に至りました。しかし、もし放置していたら脳梗塞を発症していたかもしれません。
この方は信頼のできる病院に紹介をし、しっかりと治療を受けていただくことにしました。後日届いた紹介状のお返事には「ご指摘の通り一過性脳虚血発作が疑われます。」との記載がありました。後から出ている脱力感やしびれは脳梗塞の典型的症状ですが、MRIでは脳梗塞は確認できなかった為、TIAで踏み止まっている状態だったと言えます。
当院では常々「脳神経外科、脳神経内科へ行く時は、信頼度の高い病院を選んでください。」とご案内しています。今回のような事例が度々あるからです。脳疾患は命の危機に直結する病気が沢山あります。ですから、最寄りだからなど適当な理由で決めるのではなく、然るべき場所へ行って高い水準で検査・診察をしてもらう事が大切なのです。
当院では基本的にはセカンドオピニオンは承っておりません。まずは行った病院に、薬が効かない、症状が改善しない等のご相談をされるのが一番良い形だと考えます。理由は、その先生が処方したもの、決めた治療法にはそれなりの理由と根拠があるはずだからです。一発で最善な治療に至ることは名医でも難しいことであり、途中で治療方針が変わることはままあるのです。
但し、今回の事例のように「明らかにおかしい。」と感じる場合はご相談ください。全ての患者様を診るとはお約束できませんが、当院でお役に立てそうな場合は診察させていただきます。尚、頭痛がずっと治らないという方で精神的要因が考えられる場合は、当院ではなく心療内科か精神科にご相談ください。
当院は真剣に患者数の事を考えます。お役に立てないと判断すれば正直に「当院ではない方が良い。」とお伝えします。そこでいい顔をして患者様を呼べば、クリニックの売上になります。しかし、それでは患者様の問題は解決しません。それはいたずらに患者様の時間とお金を奪うだけなのです。
追記
患者様がお礼の挨拶にお越しになられました。送り先の病院様から経過報告はいただいておりましたが、ご本人が顔を見せにきてくれました。結果、脳梗塞にはならず通院治療で完治に向かえそうです。元気になってくれて本当に良かったです!
記事監修
院長 泉山 仁
・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医
平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業
横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科
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診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日
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