閃輝暗点の説明を間違う医師/診療症例21

患者様の状況

  • 50代の女性の方
  • 閃輝暗点が度々起こる
  • 閃輝暗点後に頭痛が起こる
  • 閃輝暗点で一度他院を受診済

 

このケース自体は、よくある閃輝暗点の患者様です。
当院のデータでは、女性の中年層の発症が多く、50代の女性が最も多いです。

問題は他院を受診した際の閃輝暗点の説明が間違っていた事です。
これが説明の際に患者様がもらった用紙です。


※用紙は患者様が持参してくださいました。


内容を一つずつ確認していきましょう。


片頭痛の症状→間違った説明です

まず、閃輝暗点が偏頭痛の症状と断言しています。これは間違いです。
閃輝暗点は偏頭痛の方にしか起こらないと誤解している医師が非常に多いです。

ただ、この方は偏頭痛による閃輝暗点なので、ご本人への説明では合致するという事で不問にしておきます。

痛くなる、吐いたり、気分が悪くなる→正しい説明です

これは偏頭痛の方であれば、閃輝暗点後に起こる症状です。
よって、説明内容は正しいです。

 

CTを撮ることがよい→間違った説明です

脳血管障害の確認を行うには、CTではなくMRIが適切です。
血管を撮る場合、MRIの方が鮮明に映る事は常識です。

例外として、造影剤を用いてCT撮影をした場合に限りよく映ります。
しかし、通常のCT検査で造影剤を用いることはありません。
よって、これは不適切な案内です。

今回は患者様ご自身の判断で、MRIがある当院へ受診されました。
しかし、こう説明を受けたら大半の方はCT前提で探してしまうでしょう。

まず検査で引っ掛かることはありません→間違った説明です

またしても言い切っていますが、間違っています。
閃輝暗点の方のうち、1~2%程度は脳の病気が原因で起こっています。

このような不適切な説明は、検査へ行こうと思う方を足踏みさせます。
「一度はMRIで検査」が正しい説明です。
無論、脳の病気である可能性があるから検査を推奨するのです。


脳の病気である確率については下記記事をご参照ください。
閃輝暗点が脳梗塞である確率

 

誤解の多い病気

実は今回のような誤解はよくあります。

閃輝暗点の診療経験が豊富な科は、脳神経外科・脳神経内科・眼科です。
しかし、それらの科を専門とする医師でも間違った認識を持っていることは、ままあります。

ちなみに、今回紹介したケースで担当した医師は脳神経内科です。
受診先はいわゆる大きな病院にあたります。
そんな所でもこのような事態が起こっています。

何故、間違った認識が多い?

それは閃輝暗点が軽視されているからです。
そして、閃輝暗点には患者様と医師との認識に大きなギャップがあります。

医師の認識

・患者数自体が少ない
・稀に脳の病気の可能性がある
・場合によっては、病気の名前しか知らないケースもある
・総じて、大した事のない病気との認識

患者様の認識

・視覚的症状で極めて大きな不安を覚える
・直感的に目か頭がおかしくなったのか?と感じる方が多数
・精神的に不安定になったり、生活に支障をきたす方もいる
・医師と認識のギャップ差が大きい

もう一つの問題

ここでも一つ問題があります。
それは【患者が非常に少ないという認識は間違っている】という事です。

当院の見解では閃輝暗点は何の問題もない普通の方に一時的に起こる、異常な症状の一つであると考えています。
疲労感を感じた際に、特有の症状が出た経験のある方は、結構多いでしょう。

例えば、まぶたがピクピクと痙攣する、指先が震える、蕁麻疹が出るなどです。
これらと同様に、身体へストレスが掛かった際に、出る症状の一つであるという説です。

いわゆる特別な方だけに発生するという認識ではありません。
偏頭痛持ちの一部の方だけに起こるという事はありません。

患者様が少なくない事は、twitter一つを挙げてもわかります。
連日、閃輝暗点が起こったとツイートされる方が数十人います。

本当に稀な病気だとしたら、あまりにも多すぎる数です。

なぜなら、以下の条件で相当絞り込まれるからです。
1.twitterをやっている方
2.よく自身の体調をツイートされる方
3.その病気が閃輝暗点であるとわかっている方
4.閃輝暗点時にわざわざツイートをされた方

これだけ条件が絞られた上で、毎日数十人おられるという事は
【閃輝暗点はありふれた病気である】と考えた方が自然です。

 

記事監修

院長 泉山 仁

・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医

平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業

横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科
田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分

診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日

 
電話番号:045-482-3800

TOPへ