椎骨動脈解離は怖い病気です。
A.脳梗塞・くも膜下出血を起こすからです。
ですが、多くの方は脳梗塞やくも膜下出血にはならず治っていきます。しかし、その経過を詳しく説明したり、公表する病院が殆どない事に気が付きました。
当院では通常の脳神経外科クリニックより、遥かに多くの症例を診ています。よって、この状況を活かして、椎骨動脈解離のその後を公開します。
椎骨動脈解離はどう治る?
椎骨動脈解離は首を通る血管が損傷した状態です。血管が損傷することにより、本来の血管と比べて狭い部分が出来たり、太い部分が出来ます。この異常な形となった血管が元通りに近づいていく事が回復です。
重要ポイント
- 回復には時間が掛かる
- 完全に元通りになるとは限らない
- 必ずしもスムーズに治るわけではない
- むしろ一度悪化する場合もある
- 再発しないか、不変になるまで診る
椎骨動脈解離の完治とは?
現在の医学では、何を以って完治とするか決まっていません。ですので、当院の経験上のお話とします。
インターネット上には一ヶ月や二ヶ月で完治すると書かれている事があります。しかし、この情報は間違っています。そんなに早く治りません。また、一度悪化する方もいます。この悪化が確認できる状況が一か月後、二ヶ月後だったりします。
治癒の基準が定まっていない以上、状態が不変である事が確認できるまでは、経過を見る必要があります。ベストを尽くすなら発症から2年間は経過を見るべきです。尚、この期間は常に頻繁に撮るわけではありません。徐々にMRIの撮影スパンを広げていき、最後は数か月後や半年後となります。
診ていく期間は最低でも一年は欲しいです。その理由は一回良くなった状態を確認するだけでは、大丈夫と言い切れないからです。治ったかなと思ったタイミングで再発する方がいるのです。
これらの内容は脳神経外科や脳神経内科の医師でも知らない事が多いです。医学上、そこまで詳細に解明されていない病気だからです。いわゆる、脳梗塞やくも膜下出血を発症していない解離の方に関する情報が圧倒的に不足しています。
椎骨動脈解離の経過画像
実際の患者様の経過を、画像で紹介していきます。
1人目 後頭部痛 重い荷物運びで発症 9カ月経過
発症直後
経過
9カ月後
2人目 後頭部痛 マラソンで発症 4カ月経過
発症直後
経過
4カ月後
3人目 後頭部痛 強いマッサージで発症 6カ月経過
発症直後
経過
6カ月後(再発)
こうして実際の患者様の治り方を診ていくと、1年や2年の経過観察が必要だとわかるでしょう。繰り返しますが解離はすぐには治りません。数か月単位で治っていきます。
また、経過途中で、血流が悪くなったり・こぶ状の膨らみができる事があります。経験の浅い医師が診ると、すぐにでも病院に送りたくなる事案です。しかし、このような経緯は度々あります。これは一時的な悪化であるケースが多く、その場面で焦らずに経過を診ていく事が大切です。
解離発症後の対応
椎骨動脈解離は治る病気です。多くの場合、元通りの形に自然修復されていきます。但し、一部の方は元通りになりません(体感では5~10%の方)。これは全く治らないという事ではなく、部分的な回復に留まるという意味です。
治るまでの間は、脳梗塞やくも膜下出血の発症率が、飛躍的に上がります。これに対し予防策として抗血小板薬などを処方する治療法があります。これが有効であるとの見解を持つ医師がおられます。しかし、この治療には科学的な裏付けが存在しておらず、処方に否定的な医師もいます。
当院は有効と考えており、必要に応じて処方を行います。これまで脳梗塞リスクが高いと考えられる患者様、数十人に処方してきましたが、その後、脳梗塞になったという報告は一例も受けていません。
現在、これが椎骨動脈解離への唯一の治療策です。尚、処方に否定的な先生に診てもらう場合は、痛み止め以外の薬は出してもらえないと思ってください。
経過観察期間は、最低でも1年、できれば2年フォローアップしていくのが良いです。最後の数回は画像上、変化がないかもしれません。しかし、この病気の最後の工程は、状態が不変であること = 良くなった状態で落ち着いている事を確認することです。
一回良くなった画像が出たからといって、その場面で治癒とみなすのは早計です。さきほど、画像で紹介した3人目の方は6カ月後に再発しています。
解離が疑われる場合は?
MRIがある脳神経外科や脳神経内科を受診してください。大きな病院ではなくクリニックで構いません。MRIは、クリニックの方が性能が悪いという事はありません。むしろ、クリニックの方が性能が良い場合もあります。
首の痛みしか出ていない場合、整形外科へ行かれる方が多いですが、ほぼ見つかりません。通常のレントゲンやCTでは解離の判断ができないからです。
また、MRIを受けても見逃される場合があります。それは医師が解離の疑いを持たない場合です。通常のMRIの撮影工程には、解離をチェックするための工程が含まれていないからです。そのため、解離の診断経験が豊富なクリニックを推奨します。
当院で見つかる椎骨動脈解離のうち、5~6人に1人は他院で解離を見逃された方です。これは上記の理由から、解離を見つけてもらえない患者様が沢山いる事を裏付けています。
解離が疑われる場合は?
- MRIがある脳神経系クリニックへ行く
- 解離の診断経験が豊富なクリニックへ行く
行き先を決めかねる場合は、当院を候補にしてください。
当院は横浜市青葉区にある脳神経外科・脳神経内科です。検査機器はMRIです。椎骨動脈解離疑いの患者様を年間200人以上診ています。そして、実際に年間20人以上の椎骨動脈解離を見つけています。※一般的な脳神経クリニックの場合、見つかる人数は年間2~4人程度です。
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記事監修

院長 泉山 仁
・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医
平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業
田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分
診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日