病気について詳しく調べると、どうしても医学的な専門用語が飛び交い、一般の方には理解が難しい状況があります。
特に専門的な内容では、あまりにも難しい言葉が並び、理解するだけでも難解です。
そこで本記事では、なるべく簡単な言葉を用いて説明を行います。
尚、本ページは椎骨動脈解離をより詳しく知りたい方向けの内容となっています。
椎骨動脈解離とは?をご覧いただき、更に情報が欲しい方のための内容です。
脳の動脈解離について
椎骨動脈に限らず、脳の主要血管の大半で起こります。例えば、脳底動脈解離、全大動脈解離、中大脳動脈解離など、、。
しかし、その多くは椎骨動脈で起こります。脳の動脈解離のうち70~80%は椎骨動脈解離です。
脳の動脈解離の怖いところは、くも膜下出血や脳梗塞の発症率が飛躍的に上がることです。
くも膜下出血は致死率の高い病気として有名です。死亡率は約1/3です。
発症と同時に強烈な痛みを起こします。「直感的に死ぬのでは?」と感じるレベルです。

実は内因性くも膜下出血のうち約3%は、椎骨動脈解離起因です。
内因性とは身体の内部に原因があることです。つまり、頭をぶつける、頭を打った等の外傷以外のケースを指します。
くも膜下出血とは?
ですが、クリニックを受診される方の大半は、くも膜下出血のリスクが大きい期間は乗り越えています。
何故なら、解離起因のくも膜下出血の殆どは解離発症から3日以内に起こるからです。
クリニックへ来られる方の殆どは、頭痛が一向に良くならない状態で来院されます。
つまり、来院までに数日~二週間程度のタイムラグがあるのです。
この期間にくも膜下出血の発症リスクが高い期間は過ぎてしまうのです。
では、4日目以降は、何を気にすべきなのか?
それは脳梗塞の発症リスクです。
脳梗塞とは?
脳梗塞も解離発症から3日以内での発生が多いのですが、
脳梗塞の場合は、後々に結果的に血管が詰まって発症するケースがあります。
これは発症から10日後.・20日後・30日後といった、時間差で発生する方が度々見受けられます。
これを防止するために、注意深く観察することが、外来での椎骨動脈解離の診療です。
椎動脈解離の特徴
画像における椎骨動脈解離の特徴は膨れと狭まりの両方が確認できる事です。この状態を医学的には"パール&ストニング pearl and string"と呼びます。血管が裂けた部分が膨らんでおり、その前後が狭くなっている状態にある事が多いのです。

※この方は非常にわかりやすいですが、このような教科書通りの綺麗な形は少数です。見る角度を変えたり、違う撮影方法を用いるなど、複合的な判断基準で見つけることになります。この判断力は経験に培う能力です。医師歴の長さと解離発見の能力は比例しません。
動脈解離部分は、発生から1カ月程度はよく形状が変わります。
画像上では、進行していると思わせる兆候もよくあります。
・血流が悪化し血管が映らなくなる
・膨らみがより大きくなる
など、、
しかし、これらは治癒の過程で、画像上一時的に悪化するケースがよく見られます。
そのため、経験の浅い医師の場合誤った判断を招く事があります。
基本的に初回の来院時と二週間後に撮影したものを比較した場合、全く同じ状態はあまりないと認識してください。
初回のMRI撮影で血管が映っていたとしても、二回目・三回目には画像のように血管が消えてしまう場合があります。
※画像は向かって左側の血管が消失。

しかし、これは血流が悪くなり消えるケースが多いのです。厳密には流速の遅い血の流れはあり、何とか血が通っている状態である事が多いです。完全に詰まっているのかどうかは別の撮影技法を用いて確認します。
実は10人に1人が解離経験者?
東京都観察医務院で173名の方を対象に椎骨動脈を調べた事例があります。これらは脳の病気とは無関係な原因でお亡くなりなった人を対象し、椎骨動脈を診たところ、10.6%の方に過去に解離が起こった跡が見つかりました。
これは椎骨動脈が弱い血管であり、特別な既往を伴う方、体質的な虚弱などに限らず、誰にでも起こり得るものであるとの仮説が成り立ちます。その仮説を実証するために、当院で積極的な椎骨動脈の精査を行ったところ、3年半で113名の椎骨動脈解離を診る事に至りました。通常の脳神経クリニックで年に数人見つかる程度の病気と認識されてきましたが、当院では年間40名近い数値が出たのです。これは解離と診断されていない潜在的な患者層が多数存在する事を暗に示しています。
椎骨動脈解離の発生部位
椎骨動脈解離の多くは頭よりの部分で起こります。
この画像をご覧ください。

椎骨動脈は途中で二つに分かれます。
この分かれた部分にある程度近い箇所が、よく起こる場所です。
尚、医学的にはゾーン別にV4からV1までに分類されています。

引用先:T2-Reversed BPASによる椎骨動脈描出能の改善
椎骨動脈解離は概ねV4、V3のゾーンで起こります。
しかし、時折V2、V1にも起こります。ですが、これを通常の脳神経外科で見つけてもらう事は極めて難しいです。
最初から椎骨動脈解離疑いで、部位を広めに撮影した上で、下まできっちり医師が確認しないと発見に至りません。
椎骨動脈解離で危険な部位
最も危険性の高い位置は、V4の椎骨動脈解離です。
V4は枝分かれする部分に一番近い箇所です。
血管の裂けが上向きに進行した場合、上部の1本しかない部分にまで及ぶケースがあります。
その後、血管が詰まると合流先のため極めて危険なのです。
椎骨動脈が片方詰まった場合危険な状況です。ですが、幸いにも椎骨動脈は2本あります。
ですから、詰まっていない反対側の椎骨動脈から何とか血を供給してもらう事が可能です。
しかし、詰まりが合流後の1本しかない部分で発生した場合は死に至る可能性があります。
脳梗塞の死亡率は10%ほどあります。
先ほどの画像で説明しますと、緑の×印が詰まった場合の状態です。

当然、バツ印より上に血が行き届かなくなります。
脳が大変な事になるのは容易に想像にできるでしょう。
誰に診てもらうのが良い?
椎骨動脈解離が不安な場合、解離の診断経験が豊富な医師に診てもらうことが、最も精度の高い検査になります。
「脳神経外科医なら誰でも良いのでは?」という認識は大いなる誤解です。
理由はこちらの記事をご覧ください。
なぜ椎骨動脈解離は見逃されるのか?
結論だけお伝えしますと、受診しても見つけてもらえないケースが多発しているからです。
兼ねてより何度も警鐘していますが、残念ながら解決する未来は見えていないのが現状です。
まずは当院だけでも、、との思いから、精度の高い検査を実現しようと尽力しているのが実態です。
結果的に年間40名近いペースで診ているので、多少なりとも良い働きが出来ているのではないかと考えています。
記事監修
院長 泉山 仁
・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医
平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業
田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分
診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日