ロコアテープは巷で「最強の湿布薬」と呼ばれていますが、なぜそれほど高い評価なのか?どんな特徴なのか?を解説していきます。
ロコアテープは、貼り付けるタイプの湿布のお薬です。

痛み止めの選択肢
痛み止めを処方する場合、多くのケースでは飲み薬と貼り薬の二択です。貼り薬とは湿布の事です。湿布にも鎮痛作用のあるものが複数存在します。ロキソニンテープやモーラステープなど。
しかし、多くのケースでは錠剤が処方されています。その代表格がロキソニン錠です。
なぜ湿布より錠剤が選ばれるのでしょうか?それは錠剤の方が効き目が強いからです。ですが、近年この常識が変わりつつあるのです。
それはロコアテープの登場です。ロコアテープは2016年に大正製薬から登場した比較的新しい湿布です。変形性関節症の方を適用とする貼り薬として発売されました。

湿布が抱えてきた課題
湿布薬は貼り付けた部分に直接作用します。ですが、湿布に共通する残念な点があります。それは、浸透率の関係で飲み薬より効きが弱い傾向にあることです。
では、ロコアテープはその問題をどう解決したのか??
続きます。
ロコアテープの特徴 ここがすごい
経皮吸収性の高さ
ロコアテープは、有効成分である「エスフルルビプロフェン」が皮膚から高い割合で吸収されるように設計されています。これは、ハッカ油を配合することで皮膚への浸透性を高めているためです。
その結果、貼り薬でありながら、飲み薬と同程度の有効成分が患部に届き、強力な鎮痛・消炎効果を発揮します。
強力なCOX阻害作用
ロコアテープは、痛みや炎症の原因物質であるプロスタグランジンの生成を促すCOX(シクロオキシゲナーゼ)酵素の働きを強く阻害します。特に、炎症を引き起こすCOX-2への作用が期待されています。
有効成分のエスフルルビプロフェンは、フルルビプロフェンという物質のS体(有効な鏡像異性体)のみを利用しており、より高い効果をもたらします。
ロコアテープの開発目的
ロコアテープは二つの目的で開発されました。
1.胃腸障害の懸念がない薬を作る
2.効能の高い湿布を作る
1番は湿布薬にする事で解決します。問題は2番です。どう浸透率を上げて、より効く湿布を開発するかです。
そこで考えられた手法が製剤方法の変更です。通常、湿布薬はS体とR体で作られます。両方とも痛みに効く成分ではあります。
ですが、より皮膚への浸透度が高いS体だけで作ると、痛みに対してもっと高い効果が期待できます。この理論をもとに開発されたのがロコアテープです。
~豆知識~
ロコアテープには「貼る飲み薬」というあだ名が付いています。これには飲み薬並みによく効くという意味が込められています。効き目の強さにコミットした湿布だからこそ、付く名前です。
湿布より飲み薬の方が効き目が強いのは、浸透性の問題にあります。湿布は「安全性は高いが効き目は弱い」が定説でした。その常識を覆したのがロコアテープなのです。
他の湿布薬との比較
まずは浸透率のデータです。
エスフルルビプロフェン(ロコアテープの主成分)
93
ケトプロフェン(モーラステープの主成分)
67
ロキソプロフェン活性代謝物(ロキソニンテープの主成分)
32
続きまして、薬剤の効きめの強さです。
※数値が低い程、効きめが強いです。

引用先:クリニックマガジン 43巻 7号
エスフルルビプロフェン(ロコアテープの主成分)
8.97
ケトプロフェン(モーラステープの主成分)
38.2
ロキソプロフェン活性代謝物(ロキソニンテープの主成分)
1470
エスフルルビプロフェン(ロコアテープの主成分)
2.94
ケトプロフェン(モーラステープの主成分)
26.1
ロキソプロフェン活性代謝物(ロキソニンテープの主成分)
25.9
最後に改善度です。

引用先:クリニックマガジン 43巻 7号
改善度
改善 95.5%
悪化 判定不能 4.5%
改善内訳
著明改善 41.3%
中程度改善 31.8%
軽度改善 21.4%
なぜ知名度が劣るのか?
ロコアテープは前述のデータ通り、極めて優秀な湿布です。しかし、知名度はいま一つです。その理由は2つあります。
1.薬局に売っていない
2.処方する医療機関が少ない
それでも、ロコアテープの流通量は年間1億4千万枚もあります。湿布薬業界では小さなシェアですが、確かに効果が実感され、愛用されています。実際に当院にもロコアテープが非常に良かったと仰り「また欲しいです。」と来院される方がおられます。

ロコアテープの欠点
公平性の観点から悪い部分もご紹介します。
ロコアテープの主なデメリット
- 1日2枚までの制限がある
- 強い薬のため貼りっぱなしにできない(かぶれる恐れあり)
- ハッカ特有の匂いがある
- 粘着力が強い
- 他の鎮痛薬との併用は非推奨(鎮痛作用が重複するため)
一つ気になったことは、ロコアテープで調べる方の一部が、「ロコアテープ 怖い」で検索している事です。よく効く湿布なので、それなりのデメリットがあると思ってお調べになるのでしょう。ですが、重篤な副作用が多かったり、危険と言われる類の薬ではありません。その点はご安心ください。
一応、副作用について触れておきますが、目立つ副作用は前述のかぶれ等が含まれる皮膚炎です。次点で発疹や湿疹、痒みなどの症状です。画像をご覧いただければわかると思いますが、特別デメリットが多い薬ではないです。

ロコアテープ添付文書より
尚、粘着力が強い件は、水やぬるま湯で濡らすと剥がれやすくなります。一気に剥がそうとせず肌をいたわりながら、ゆっくり剥がしてあげてください。
頭痛と湿布
実はロコアテープは頭痛に対しても良い結果をもたらします。それは緊張型頭痛の場合です。肩や首の緊張から来る頭痛のため、湿布を肩や首に貼り付けてあげると、よく効きます。痛みの原因部分に直接効果的に作用することで、結果として頭痛が良くなるのです。
緊張型頭痛とは?
全頭痛の7~8割を占める、多くの人が経験する頭痛です。
頭を締め付けられるような痛みが特徴です。

原因は肩や首のコリが圧倒的に多いです。そのため、痛み止めの錠剤以外に、首や肩に湿布を貼るという手段で痛みを取り除く選択肢もあるのです。
緊張型頭痛の解説はこちら
尚、姿勢の悪さは頭痛を発生させる大きな要因です。特に首の角度は顕著に負荷をかけます。首が15度前へ傾くと、頭に12kgの負荷が掛かります。日常的にこれぐらい傾いている方は結構多いです。

まとめ
ロコアテープは痛みの解決に重きを置いた湿布です。飲み薬の痛み止めや他の湿布で物足りない方が、試してみるにはうってつけの薬です。
ただ、残念な事に頭痛にロコアテープを出す医師は少数で、選択肢にすら入っていないケースも多いです。そのため、患者様が試してみたいと思ってもハードルが高いです。試してみたい方は、一度当院へお越しいただければと思います。
※当院は脳神経外科クリニックです。腰が痛い、関節が痛いなどで必要とされる場合は、整形外科など部位に応じた診療科にお掛かり下さい。
クリニック情報
- 当院は横浜市青葉区にある脳神経外科・脳神経内科クリニックです。
- 田園都市線藤が丘駅から徒歩8分です。
- ロコアテープはMRI検査で脳に異常がない事を確認してからの処方となります。
- 当院は予約制です。事前にお電話でご予約ください。
診療日:月~木曜日、土曜日
診療時間:午前/9時~13時 午後/15時~18時
電話番号:045-482-3800
記事監修
院長 泉山 仁
・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医
平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業
田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分
診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日