医学書には載らない 600名超の精査で判明した「椎骨動脈解離」の実態

院長 泉山 仁
執筆・監修 医師紹介 ▶
院長 泉山 仁 (脳神経外科専門医)
昭和大学横浜市北部病院 脳神経外科元部長、市ケ尾カリヨン病院元病院長。専門医として日々の診療で得た知見に基づき執筆します。

当院は椎骨動脈解離疑いの患者様を数多く診ています。

その理由は 
1.積極的に椎骨動脈解離を疑う方針 
2.椎骨動脈解離疑いの患者様が自らやって来る 
という状況にあるからです。

椎骨動脈解離の精査は累計600名以上に行っています。直近3年半で113名の椎骨動脈解離を診ています。その大半が当院で発見に至った方です。

椎骨動脈解離には未解明の要素が沢山あります。現在当院では、この「誰も解明しない点を明らかにする」という意識を持って診療に取り組んでいます。

多数発見の経緯

きっかけは10万人に1~3人という発症率に疑いを持ったからです。未発見の患者様が多数いる想定です。そこで実際に慎重に調べたところ、次々に患者様が見つかり現在に至ります。当院では、疑い患者様のうち10%~15%程度の方に椎骨動脈解離が見つかります

自ら患者様が調べてやって来るクリニックになりつつあり、通常より高い数値が出る事は間違いありません。しかし、実際にそれなりの数が存在するという裏付けにはなりました。一般的な医師の認識では稀な疾患ですが、そうではないという認識を持った方が良いレベルだと感じます。


診療実態

患者様の多くが整形外科、または脳神経外科、脳神経内科を受診されますが、残念ながら相当数の誤診・見逃しが起こっています。原因は医師が稀な疾患だと思っているため、病気の第一選択肢に含まないからです。

選択肢に含まない

解離の精査を行わない

見つからない


発見にはMRIかCTの検査を必要としますが、通常の工程には解離を判断する撮影が入っていません。そのため、医師や撮影技師の判断で追加の撮影を行う必要があるのいです。他の病気を疑って偶然見つかるというラッキーチャンスも非常に少ない為、全ては医師の意識に掛かっています。

困るのは患者様

患者様の一部は他院を受診してから当院へ来られます。本来は他のクリニックに紹介されたのに取り合ってもらえず当院へ来られる方、他院でただの緊張型頭痛か偏頭痛と診断されて当院で見つかる方。このようなケースを何人診てきたかわかりません。残念ながら、適切な診察ができる医院は限られているのです。

注意喚起する理由

椎骨動脈解離は命の危険に繋がる可能性があるからです。解離は脳梗塞、くも膜下出血の発症リスクを格段に上げます。そのため、実際に解離がきっかけで亡くなる方がおられます。ですから、病院できちんと診断が付くことが重要なのです。

しかし、ちゃんと診てくれるクリニックが少ないのが実態です。だからこそ何度も記事にして警鐘を鳴らしています。まずは当院の記事を見た患者様だけでも救いたいという想いです。

椎骨動脈解離の種類

椎骨動脈解離には血管が破裂するくも膜下出血発症タイプと血管が裂ける脳梗塞発症タイプに分かれます。この病気の研究は過去に様々な医師が挑戦し、研究・発表に至っています。しかし、その多くはくも膜下出血タイプの研究であり、脳梗塞タイプの情報が少ないです。

これは患者様視点ではあまりに役に立たない情報です。何故ならクリニックで見つかる椎骨動脈解離は殆どが脳梗塞タイプだからです。この事実自体があまり認識されていません。

殆どが脳梗塞タイプ

椎骨動脈解離の分布
脳梗塞タイプ:約70%
くも膜下出血タイプ:約30%

しかし…
クリニックで見つかるのは、ほぼ脳梗塞タイプです。

くも膜下出血タイプは症状の進行が早いです。頭痛が起きてから3日以内に95%以上の確率で破裂します。現実的には、頭痛が起こって即日受診する方はほぼいないので、受診より破裂が先になり病院へ担ぎ込まれます。逆に言いますと、くも膜下出血タイプで受診される方は危険なタイミングを過ぎており、その後に破裂する可能性は極めて少ないです。

対しては脳梗塞タイプは遅れて発生するケースがそれなりにあります。経験上患者様が受診されるのは、痛みの発現から3、4日以降、遅い場合は2週間程度経ってから来られます。ここで椎骨動脈解離が確認できた場合は、脳梗塞のリスクを下げる為に抗血小板薬の処方を行います。この有効性は証明されていませんが、多くの医師が有効だと確信して処方します。

参考までに当院では、これまで約30人に抗血小板薬を処方しましが、その後に脳梗塞になったという報告は一例もありません。ほぼ全例、継続受診していただき、安定するまでの経過を診ているため確度も高いです。逆に抗血小板薬を出さない事で脳梗塞を発症するケースは病院勤務時代に幾例も出くわしています。以上の点から、抗血小板薬の処方は有効であると考えます。

両側に解離が見つかるケース

1年に1~2例程度見つかります。両側に起こっているケースは診る側としても非常に怖いです。椎骨動脈が詰まる場合は、最悪片方が詰まっても、もう片方の血の流れがしっかりあれば、直ちに死に至ることはありません。

しかし、両側に発症している方が両方とも詰まったら…。想像したくないですね。残念ながら経過を見守るしかない場合もあり歯がゆい思いです。いっそ両側とも発症している場合は、脳梗塞やくも膜下出血の発症を待たずに手術に踏み切るという選択肢もあると思います。しかし、それを患者が希望したとしても、どこまで受けてくれる病院があるのか未知数です。

解離以外の裂けがあるケース

血管が裂ける可能性があるのは椎骨動脈解離だけではありません。付近の血管ですと、脳底動脈(椎骨動脈解離が合流部分から上)や、内頚動脈(椎骨動脈の外側にある一番太い血管)でも裂けることがあります。椎骨動脈解離と比べると症例は少ないですが時々見つかります。

当院で撮影をする場合は、椎骨動脈だけでなくもっと広範囲を撮りますので、椎骨動脈以外もの確認できます。実際に椎骨動脈解離疑いで検査を行い、脳底動脈や内頚動脈の裂けが見つかるケースはあります。

日常的に起こる誤診

実際には椎骨動脈解離ではないのに、椎骨動脈解離として判断してしまう事例があります。MRA撮影で片側の椎骨動脈が映らない場合に、片側が詰まっていると判断してしまうケースです。生まれつき片側が極端に細い、または存在しない方がおられます。そのため安易にMRA画像だけで判断せず、実際に血管が存在するか、また存在するなら太さを確認する必要があります。

細く血液の流れが遅い場合は片側の椎骨動脈が殆ど映りません。これは知見のある医師なら当然と思うかもしれませんが、勉強不足な先生がいるのも事実です。

悲しい治療症例

椎骨動脈解離の予後状態で、不必要な入院をさせられた患者様がいました。出血が治まっている事を確定させると入院させる理由がなくなるので、MRI撮影時にあえてその確認が出来る画像を撮らないという保険を打たれていました。椎骨動脈解離で入院させるのですから、それを撮らないのは不自然なのです。

椎骨動脈解離が起こった日から入院までの日数と、患者様の解離レベルを診るに、入院した時点でほぼ100%出血は治まっています。しかし、証拠が撮られていないため、病院側が言い訳出来る状況なのです。これでは、誰のための何の治療なのかわかりません。こういう事例には時々出会いますが、非常に悲しい思いです。

椎骨動脈解離について

基本をおさらいできるページと、さらに深く知りたい方向けのページをご用意しております。
ぜひご覧ください。

椎骨動脈解離(基本編)

椎骨動脈解離(深層編)

記事監修

院長 泉山 仁

・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医

平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業

横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科
田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分

診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日

 
電話番号:045-482-3800

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