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ノイロトロピンとは?
- 痛みを抑える作用のある薬
- 効果が出るまで2週間~4週間かかる
- 神経痛の方を中心に処方されてきた
- 帯状疱疹などの痛みにも使われる
- 実は頭痛にも効く

引用先:日本臓器製薬
頭痛に効くのか?
ノイロトロピンは頭痛に対しても効果があります。ですが、この事実はあまり広く認知されていません。特に慢性的に続く頭痛に対しては、十分選択肢となり得る薬です。そのため、慢性化している頭痛の方には試してみる価値のある薬と言えます。
この薬は神経が過敏になっている状態や血流の悪化など、痛みの根本に関わる部分に作用するためと考えられています。ただし、頭痛で処方される薬の候補の中では、かなり後ろに位置付けられています。そのため、「頭痛にノイロトロピンを使う」という考えを持っていない先生も沢山おられます。
頭痛治療のエビデンス
”有用以上40.9% やや有用以上72.7%”
文献 緊張型頭痛に対するノイロトロピン錠の使用経験 難治症例を中心とした検討 より
”軽度改善以上83.3%”
こちらは私自身が検証・発表を行ったものです。
文献 第29回日本頭痛学会 筋緊張型頭痛に対するノイロトロピン錠の有用性 より
このように選択肢として検討できる根拠があります。
緊張型頭痛とは?

頭や後頭部がぎゅっと締め付けられるような鈍い痛みが続く頭痛です。最も多いタイプの頭痛で、全ての頭痛のうち、およそ7割が緊張型頭痛だと言われています。肩や首の疲労感、ストレートネックなど原因です。
変わった薬 ノイロトロピン
ノイロトロピンはかなり特徴的な薬でもあります。この薬には珍しい原材料が使われています。ウサギの皮膚から抽出した成分をもとに作られています。
成分の正式名称は「ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液」と言います。これはいわゆる活性物質の一種で、身体が本来持っている痛みを抑える力を強める働きがあります。
つまり、人に投与すると、その人自身の痛みを和らげる力をサポートする方向に働きます。その結果、痛みが和らいでいきます。ただし、ここが特徴的なのですが、顕著に効いたと感じにくい薬です。
患者様の言葉をお借りすると「よくわからない」、「効いている気がする」といった曖昧な感覚です。飲むことを止めた段階で、初めて効果を実感する方も多いです。
これは効果の出方がゆっくりで、身体への負担が小さいことで起こる現象です。ノイロトロピンは副作用が少なく処方しやすい薬でもあります。ゆえに自然に作用するため、本人が良くなったと実感しにくいのです。
こういう話を聞くと、オカルトや眉唾な印象を持つ方もいらっしゃると思います。ですが、ノイロトロピンはれっきとした薬です。薬を名乗る事が許されるのは、国が有効性と安全性を認めたものだけに限られます。つまり、公的に痛みに効く薬として承認されているものです。
他の痛み止めとの違い
ノイロトロピンは、いわゆる市販でよく聞く痛み止めとはアプローチが異なる薬です。一般的な鎮痛剤、ロキソニンなどは、プロスタグランジンという物質の発生を抑えることで痛みを下げます。
プロスタグランジンは、炎症や発熱によって生成される物質で、痛みを感じさせたり、痛みを増幅させる作用があります。一方ノイロトロピンは、全く別の角度から痛みにアプローチします。

引用先:自由が丘 清澤眼科
ノイロトロピンの作用
下行性疼痛抑制系の活性化
脳や脊髄には、もともと痛みを抑えるブレーキのような神経の仕組みがあります。これを下行性疼痛抑制系と言います。ノイロトロピンは、このブレーキの働きを活性化させることで、痛みを和らげると考えられています。セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質に作用していることが報告されています。
末梢血流の改善
痛む部位の血行を良くする作用があります。
起炎物質の遊離抑制
痛みや炎症に関わる物質、ブラジキニンなどの遊離を抑える作用があります。
実はジェネリックがない薬
ノイロトロピンは古くからある薬です。日本臓器製薬が1949年に開発し、80年以上使われてきた歴史があります。ただし現在ジェネリック(後発薬)はありません。理由はその精製方法にあります。
前述の通り、ウサギの成分を使った珍しい原料です。これを技術的に後発品で安価に用いる事が難しいとされています。
こうなると「薬代が高いのではないか?」と不安に感じる方もいると思います。ですが、安心してください。ノイロトロピンの薬価は1錠28.5円です。1日4錠の服用なので1日あたり114円です。この価格に保険が適用されます。健康保険3割負担の方で、1日あたりの自己負担は約34円です。
※あくまで薬単体の値段です。実際には薬局での受付料や説明料などが加わるため、もう少し高くなります。
ノイロトロピンを試したい方へ
私はノイロトロピンを30年以上処方してきました。安全で副作用は極めて少なく、有効性の高い薬だと実感しています。頭痛に対しては、頭痛が慢性化していて、王道の痛み止めが効きめが薄い場合に良い選択肢となります。
一方で頭痛にノイロトロピンを使う医師はそこまで多くありません。そもそも、治療の選択肢に入っていないケースも多いです。そのため、患者様が試してみたいと思っても少しハードルが高い薬でもあります。試してみたい方は、一度当院へお越しいただければと思います。
クリニック情報
- 当院は横浜市青葉区にある脳神経外科・脳神経内科クリニックです。
- 田園都市線藤が丘駅から徒歩8分です。
- ノイロトロピンはMRI検査で脳に異常がない事を確認してからの処方となります。
- 予約制です。受診前に必ずお電話にてご予約ください。
診療日:月~木曜日、土曜日
診療時間:午前/9時~13時 午後/15時~18時
電話番号:045-482-3800
診察のみでの処方を希望される場合は、検査機器のない脳神経内科などへ行かれてみてください。処方してもらえるかは先生次第です。先生の考え方次第では断られるケースも多分にあると思います。
ノイロトロピンの適応性
急性の頭痛→△ 慢性の頭痛→○
即効性を期待→△ 遅効性を期待→○
どんな頭痛にもいきなり使う万能薬と、いうわけではありません。急性の頭痛には通常は用いません。慢性の頭痛には検討の余地があります。
この薬は数日で判断するタイプではありません。2週間から4週間かけて効果を確認します。慢性の頭痛でお悩みの方は、通常の痛み止めと作用が異なるため、試してみる価値があります。
記事監修
院長 泉山 仁
・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医
平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業
田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分
診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日