後頭神経痛は、後頭部から側頭部、耳の後ろにかけて、鋭く刺すような痛みが発作的に生じる神経痛です。
よく効く治療法はブロック注射ですが、まずは一通りの選択肢をご案内します。
1. 薬物療法
痛み止め(鎮痛薬)
市販の痛み止めが効く場合もありますが、効果が不十分なこともあります。
神経障害性疼痛の薬
痛みが強い場合や持続する場合は、神経の興奮を抑える薬(例:プレガバリン、ミロガバリン、カルバマゼピンなど)が処方されることがあります。
ビタミンB12
神経の修復を助ける働きがあるため、ビタミンB12の内服が考慮されることがあります。
筋弛緩薬
肩こりや首こりが原因となっている場合、筋肉の緊張を和らげるために使用されることがあります。
漢方薬
葛根湯など、上半身の血流改善作用が期待される漢方薬が用いられることもあります。
抗不安薬
ストレス性の要因が強い場合に、不安や緊張を和らげる目的で少量使用されることがあります。
2. セルフケア・生活習慣の改善
冷やす
後頭神経痛の発生時には、痛む部位を冷やすことで、神経の興奮が抑えられる場合があります。ただし、長時間冷やすと筋肉のこりにつながるため注意が必要です。
安静にする
痛みが強い場合は、無理な動きを避け、安静にすることで痛みが和らぐことがあります。
姿勢の改善
姿勢の悪さが原因となることもあるため、良い姿勢を心がけましょう。
3. 神経ブロック注射
痛みの出発点である後頭神経の近くに局所麻酔薬を注射し、痛みを遮断します。即効性があり、筋肉の緊張も緩和される効果が期待できます。
ブロック注射について
後頭神経痛にはよく効く痛み止めがあります。
それはブロック注射です。注射で神経に直接アプローチします。
飲み薬の痛み止めより、よっぽど効くのですが残念な点もあります。
それは、どこでも打ってもらえるわけではない事です。
ちなみに当院ではブロック注射を打っています。
後頭神経痛に対しては、ブロック注射が顕著に効くので
患者様の選択肢として用意してあげたいのです。
後頭神経痛の特徴として
- 痛みが強い
- 飲み薬の痛み止めでは物足りない
というケースはよくあり、そういった方は注射の選択肢があると喜びます。
患者様が後頭神経痛の経験者で注射を打った事がある場合は、
ご本人が打って欲しいと希望される事も珍しくありません。
効果が出るまでの即効性が高い事もメリットです。
ただ、当院はペインクリニックではないため、一定の条件は設けます。
ブロック注射を打つだけの方が並んでしまっては、通常診療に支障をきたすからです。
※ペインクリニックとは、痛みに特化したクリニックです
当院は脳神経外科ですので、脳疾患疑いという形で入ります。
まずはMRI検査で頭の中に異常がないかを確認し、やはり後頭神経痛だと言える場合に、ブロック注射を選択肢にします。
緊張型頭痛にもブロック注射できますか?
時折受けるご質問です。
当院では「緊張型頭痛には注射は行っていない」と答えています。
緊張型頭痛の場合、後頭神経痛と同じように一箇所にブロック注射をしても良くなりません。
緊張型頭痛の方に打つ場合は4箇所、あるいは5箇所に注射する必要があります。
そして、後頭神経痛と同じようには効かないです。
正直に言いますと、緊張型頭痛の一般的な治療法とは言い難いです。
そういった理由から、他院様でも断られるケースが非常に多いです。
どうしても打ちたい場合は、ペインクリニックにご相談される方と良いでしょう。
実は緊張型頭痛というケース
後頭神経痛だと思っていた
↓
実は緊張型頭痛だった
これはよくあるケースです。
ご自身で判断を付けるには難しい場合もあり、致し方無いです。
別に患者様が悪いわけではありません。
まず、後頭部の痛み=後頭神経痛とは限りません。
椎骨動脈解離という危険な病気の方も混じっています。
首を通る血管の中には、椎骨動脈と呼ばれる血管が2本通っています。
この血管が裂けてしまう事で、出血を引き起こします。
痛みが後頭部に出るケースが多い為、後頭神経痛と勘違いされる事があります。
この病気は少し特殊な状況に置かれています。
実は病院へ行っても見つけてもらえない事が多いです。
理由はこちらの記事をご覧ください。
当院が多数の椎骨動脈解離を発見できる理由
椎骨動脈解離を発症している間は、脳梗塞やくも膜下出血のリスクを大幅に上がります。
これらの病気は亡くなる可能性がある病気です。
年齢不問のデータでは、脳梗塞では1割、くも膜下出血では3割が亡くなります。
ですから、本来は要注意の病気なのですが、残念ながら日本の医療ではそうなっていません。
当院では3年半で113名の椎骨動脈解離を見つけていますが、これは極めてイレギュラーな事例です。
そして、当院の場合は後頭部の痛みがある方を診る機会が多く、後頭神経痛の方を診る機会も自然と多くなっています。
まとめ
- 後頭神経痛にはブロック注射が有効
- 実は後頭神経痛ではないケースも多い
- 病気はご自身で判断せず医療機関へ
記事監修

院長 泉山 仁
・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医
平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業
田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分
診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日